クリスマスにはあまり良い思い出がないおじさん、さやさやです。
20代前半の頃の話です。
当時付き合っていた彼女が中央線のとある駅のロータリーにあるケーキ屋さんで働いていました。
ケーキ屋さんは土日の出勤が多く、普通のサラリーマンだったボクは土日の休みが多く、休みが合わないため、週末の夜に車でお店まで迎えに行って、食事か遊びに行くというようなことが多かったです。
彼女は自動車通勤していたのですが、ボクが迎えに行くときは電車で通勤していました。
彼女のお店の店長は20代後半のちょっと厚化粧だけど美人で気さくな人で彼女がお世話になってますみたいな感じで暇なときには立ち話をするような関係で、他の店員さんとも顔見知りになっていて、何回か彼女の仕事仲間とも飲みに行ったり、BBQしたりとそれなりに良い関係でした。
アニメか何かの専門学校生のアルバイトだけが男性であとは女性だけの職場でした。
このアルバイトは痩せていて背が低くてメガネをしていて見るからにオタクっぽいのですが、ボクが彼女を迎えに行った際に顔を合わせるとなんだかやたらとボクと彼女の会話に入ってこようとしたり、
「さっちゃんにはお世話になってるんで」とかボクの彼女のことをちゃん呼びしてて、話は面白くないけど口数は多い意外と明るい子でした。
彼女はこのアルバイトのことを「てつや君」(仮名)と呼んでました。
お店ではみんなにそう呼ばれているとのことでした。
ボクも顔を合わせたときにはてつや君と呼んでました。
クリスマスイブはケーキ屋の仕事が終わるのも遅く、翌日のクリスマスも忙しいということでイブの夜には彼女とは会わないことになりました。
翌日はボクの会社は休みだったのでどうしようかなという感じでした。
2ヶ月くらい前にRX-7というスポーツカーを購入したばかりだったので、もし彼女が一緒なら横浜にドライブでもしようと思っていました。
でも仕事なのでしょうがないとうことで、一人でドライブに行くことにしました。
首都高を流そうかと思ったのですが渋滞してそうなので、埼玉県の飯能市から秩父市に向かって行って途中から右手の山に入ると峠道があったような気がしたので山ならイチャイチャしてるカップルもいないだろうしということで行ってみることにしました。
3時間位走ったら帰って軽く飲んで寝ようという感じだったと思います。
ずっと欲しくてやっと手に入った車で一人で夜のドライブはけっこう楽しかったです。
とにかく軽くてパワーもあって、ゆとりを持って運転している限りはサクサク曲がって面白い車でした。
ハイオクでリッター4キロくらいしか走らないのは怖かったですがそれ以外は最高に気に入ってました。
川沿いの国道をゆるゆるっと流して、峠道に入ってサクサクっと登っていくと山頂を超えた付近に駐車場があってちょうど夜景が見えるポイントのようで思いの外に車が多く止まっていました。
ボクも車を止めて、当時は喫煙者だったので夜景を見ながら一服することにしました。
窓を開けて軽いメンソールのタバコを吸いながら、彼女はまだ仕事中だな~とか、将来ずっと今の会社にいるつもりはないけどどうやって生きていこうかなとか、方角的に東京側の夜景ではなくて埼玉県の鶴ヶ島方面の街の明かりなのかなとかぼんやり思ってました。
夜景は空気のせいなのかゆらゆらして見えて意外とキレイだった記憶が残っています。
2本くらいゆっくりとタバコを吸って、飯能側から登ってきたけど反対側の毛呂山に抜けて関越で帰ろうかなと考えているときでした、
「お兄さん」と声をかけられました。
ちょっと驚いて声の方を見ると、いかにも遊んでそうな感じの高校生くらいの女の子が二人立ってました。
一人は金髪でもう一人は眉毛が繋がってました。
ロクな用事じゃないだろうなと気を引き締めました。
金髪のほうが積極的に話してきました。
「うちらナンパされて~夜景見に行くと思ってたら山道でやらせろって言われて~」みたいな感じでした。
要約すると川越市内でナンパされて男二人の車に乗って夜景見に行こうって山に来たんだけど林道みたいなところで車停められてエッチするか歩いて帰るか選んでいいよって言われたらしい。
それで車から降りてクリスマスイブの夜に山の中を歩いてボクの車の前にたどり着いたということらしい。
「車乗せてよ」って言われて、反射的にすげぇやだなって思ったけどこれで断ったら流石に人としてやばいかなと思って、いいよって言っちゃいました。
すげぇ狭い後部座席に眉毛ちゃんを乗せて、助手席に金髪ちゃんを乗せて「地元の警察でも行く?」ってボクが聞いたら「それやばいんで無理」って言われて川越市内まで送ることに。
少年課の刑事さんと顔見知りなんだろうな~と思いつつとりあえず川越市内に向けて発車しました。
小一時間の道中の会話です。
金髪「お兄さん、彼女いないでしょ」
眉毛「キャハハ」
ボク「いるから」
金髪「見栄張んなよ」
眉毛「キャハハ」
ボク「運転に集中したいので話しかけないでくれるかな」
金髪「でもお兄さん彼女いないからうちら助かったんだよね」
眉毛「キャハハ」
ボク「いるから」
金髪「いやいや、彼女いる人は一人で夜景見に来ないから」
眉毛「キャハハ」
ボク「いるから」
金髪「川越付いたらお礼にちょっと遊んであげてもいいよ」
眉毛「キャハハ」
ボク「君たちを自宅に送ったら帰るから」
金髪「家なんて教えるわけ無いじゃん」
眉毛「キャハハ」
ボク「警察か自宅のどっちかまで送るよ。君たち未成年だよね」
金髪「うぜぇ」
眉毛「キャハハ」
ボク「ボク一応大人だからさ」
結局こんな感じで、川越市内に入ったら二人共トイレ行きたいっていい出してコンビニの駐車場で車から降りたら「うちらここから歩きで帰るからありがとうね」といって二人共路地裏の方に消えていきました。
追いかける義理もないかと思って帰路について、小一時間かけて帰宅してお酒飲んで寝ました。
金髪ちゃんとと眉毛ちゃんにも色々と事情はあるんだろうけど頑張れって思いました。
もう二度と会うこともないだろうけど、頑張って生きていてくれれば送った甲斐はあるのかなと思えます。
会話は最悪でしたけどね。
翌日、クリスマスは彼女が早く上がれるというので夕方暗くなる頃に彼女の働くお店にお迎えに行きました。
彼女は売れ残ったケーキやお菓子を持ってお店の裏の駐車場で待っていました。
二人共明日は休みなので夜の海を見にいこうということになり、三浦海岸までドライブすることにしました。
運転しながら昨日の金髪ちゃんと眉毛ちゃんの話を彼女にすると「ほんとは若い子に声かけられて嬉しかったんじゃないの」みたいな事を笑いながら言われました。
彼女は冗談で言ってるんでしょうけど、ほんとに金髪ちゃんと眉毛ちゃんは迷惑でしかないっす。
ボクが本当に嫌だったんだけど大人だから見捨てるわけにも行かなくてなんて言っていたら彼女が急に真顔になって、じつはさぁって話し出しました。
昨日の夜、彼女とアルバイトのてつや君でお店を閉めてから片付け作業しているときに、てつや君に告白されたそうです。
好きです。
あんなクズと分かれて(ボクのことらしいです)付き合ってください。
クリスマスイブに告白しようと決めてた。
って言われたらしいです。
彼女「本人の前であれなんだけどさ、前からてつやくんに彼氏さんってどんな人って聞かれたりしてて、おっさん化してるとかちょっと自分勝手とか愚痴ちゃってたんだよね。もう3年くらい付き合ってるとそういうのはしょうがないじゃん。そうしたらなんか仲悪いって勘違いされたみたいで・・・」
ボク「まぁ、そういう事はあるよね」
彼女「でも、○○だとか○○○○とかは多分言ってないよ」
それはボクに言ったらダメなやつ(*´ω`*)ゴフッ
彼女「彼氏と実は仲いいから別れるとかないと思うんで付き合えないのごめんねって言ったんだけどなんか次にお店で会うの気まずくって」
ボク「なんとかなるでしょ」
彼女「なんとでもなるかもね」
彼女は暗い空を眺めながら細いメンソールのタバコに火をつけました。
ボクも吸いたいなというと、彼女の吸っていたタバコをボクに咥えさせて、彼女は次のタバコに火をつけました。
道路が空いてきたので少しアクセルを踏み込むと、流れる夜景が少しだけ加速しました。
「結婚する?」と彼女が言ったので
「もう大人だし結婚しようか?」とボクは答えました。
あのときは輝いてたような気がしたんだけど、今となっては最悪のクリスマスの思い出かも(*´ω`*)